浅草物語

月曜日。
大事な会食があり、せっかくだからと
ご近所だけどまだ行ったことのなかった
鰻の「前川」を予約してお昼ご飯。
ここは池波正太郎が愛した名店として度々紹介されている。
駒形橋と隅田川がお座敷から見渡せる絶好のロケーション。
フワフワに蒸された鰻は上品で、肝吸もしっかり出汁が効いたお江戸味。
一方、地元成田のカリッと炭で焼かれて甘しょっぱなタレもやっぱり好き。
どちらもそれぞれの美味しさ。
なんて、食事をしている最中は少々緊張していてしっかり味わう余裕は
あまりなかったのだけれど。
浅草観光案内なども考えたものの、暑さが厳しかったので食事のみで
会は和やかなうちに無事お開き。ほんの数時間のことなのに
ひと仕事終えた後にはどーっと疲れが出てin-kyoでしばし休憩。
頭のすみっこには、映画の「東京物語」の映像がなぜか流れていた。
夕方からは思いがけないメンバー4人でごはん。
どこへ行こうか迷って、久々大衆居酒屋「鮒忠」にしよう!と
お店の前まで行くと閉店のあいさつの貼紙。
ここのところの浅草界隈の変化はめまぐるしい。
東京オリンピックに向けてなんだろうか。
呆然としてしばし立ち尽くし、ションボリしながら
当てなく歩いて思いつきで浅草松屋のビアガーデンへ行くことに。
いつもとは違う目線で見るスカイツリーとアサヒビールのビルヂング。
ションボリからだんだんウカれて2軒目へ。
2軒目はあらたに友人が合流し、さらに高い場所へ登って
キラキラのアーバンな夜景を見ながら一杯。
食べたり飲んだりしかしていないのに、
まるでシナリオでもあったかのような不思議で可笑しな浅草での一日。
いつも近くで過ごしているのに観光でもしたみたいだった。
お江戸の時代の人たちは、大きな変化に対して
持ち前の洒落っ気というユーモアで、
しなやかに、軽やかに、たくましく
時代を乗り越えていったのだろうか。
そんなことを酔ってボンヤリとした頭で考えた夜。