手にして嬉しい道具というものがある。
それは使いやすさだったり、手に馴染むサイズだったり
手触り、素材、色、デザイン?美しさ…
嬉しいの感覚はきっと人それぞれ。
けれどもついつい我慢しきれず
人にもすすめたくなってしまうのだ。

中津箒を知ったのはとあるギャラリーを通りかかったとき。
小指の先ほどの小さな箒から柄の長い箒までが
ズラリと並んだ様子に引き止められて立ち寄った。
スッと背筋が伸びるような気持ちよさを感じる
箒たちの姿がたまらなく美しい。

自宅の掃除は箒を使っているものの、
買い足すほどまだくたびれてはいない。
そう頭でわかっているのにすでに箒を選び始めている自分がいた。

「小さいのなら…」

こう言い訳をして罪悪感をぬぐってみる。
同じ理由で我が家にやってきたものたちがたくさんあるというのに。

草木染めで染められた凧糸を使って
きれいに編まれた小さな箒。
パソコンのキービードのホコリ払いにと思って
そのときは選んだのだけれど、
結局はお店のコーヒーミルの掃除用へとお役目を任命。
お気に入りの道具があることで作業はグンと楽しくなる。

お店では営業が終わったら毎日コーヒーミルを掃除している。
洗えるものは洗って、飛び散ったり歯の部分につまったコーヒー豆は
この小さな箒が活躍してくれる。箒の汚れが気になるときは
水洗いもできるから重宝している。
何年も日々使っているうちにずいぶんと小さくなって
さすがにそろそろ買い替えたいのだけれどと思っていた頃に
使い続けていた頃に中津箒の横畠梨絵さんに知人を介してお会いした。


タイミングというものはあるもので、
横畠さんにお願いをしてやって来たのが細長いスリムなカタチの
コーヒーミル用の箒。
細いけれどキュッと詰まった穂先のお陰で
細かい部分に詰まったコーヒーの粉もきれいに掃除をすることができる。

大正から昭和にかけて神奈川県の中津という地域で盛んだった
中津箒(当時は東京箒を呼ばれていたのだとか)の箒づくり。
一度衰退したものを現代の暮らしに寄り添うかたちで
復興するために平成15年に「(株)まちづくり山上を設立」
材料となるホウキモロコシの栽培や収穫に始まり、箒の制作までを
職人さんが丁寧に行う中津箒が復活した。



道具を使いながら伝わる気持ち良さや
掃除が終わったときの清々しさ。
日本の道具の素晴らしさを職人の手仕事が教えてくれる。
それが日常の暮らしの中にあるというのは
なんだかちょっと嬉しい毎日。