来週末に沼津のhalさんで本の発売のイベントが控えている。来て下さった方へ何かお土産があるといいなぁと思い、本がちょうど入るサイズの袋を少しずつ作り始めていた。もっともっと早くからやっておきたかったのだけれど、8月のあの暑さの中でミシンに向かう気力が湧かずに結局ギリギリになっている。うさぎとカメのうさぎだな、こりゃ。そうかと言って慌てて作るというのも何か違う気がしている。素人ながら丁寧に作ったものでなければお渡しする意味がなくなるし。だから空いた時間があると一気にはやらずにちょっとずつ進めている。
そしてまた明日から取材。今度はさらに北へ飛んで札幌へ。札幌は朝晩はぐんと冷え込んでつい先日はすでにストーブを点けたとか。洋服は一体何を持って行ったらいいのだろう?寒いのが恐くて2泊3日だというのについつい荷物が多くなる。こういうとき、手荷物は軽やかにバッグひとつ。という人になりたいのだけど寒がりは無理か。
怒涛の
怒涛なんて使うと大袈裟だけど先週末から旅続き。仕事で山形へ1泊。福島のA家に行くときは、大体バスを使って行くことがほとんどなので、新幹線がものすごく速く感じられてびっくりした。東京駅から福島までだったら約1時間半で到着。バスだったら約5時間。新幹線代が高いのもうなずける。さらに山形まで行くとなると新幹線でも3時間ほどかかる。今回の取材は年明けに出るムック本の取材で、編集N子さん、カメラマンAさんの女子3人。山形の駅からはタクシーに乗ってさらに1時間かけて山の中へ。気さくなタクシーの運転手さんの話声は、なだらかな坂道を自転車で気持ちよく降りてくるようでウトウトと眠りを誘う。到着するとそこは森の入口。ひんやりしたと空気が一段と澄んでいた。
この日の宿泊場所は、町にホテルか旅館の2箇所しかなくそのいずれか。山の中という旅気分も手伝って編集者N子さんと旅館をチョイス。なかなかいい選択だ!なんて自分たちを褒めていたのに到着してすぐその選択に不安がよぎる。旅館は私たち3人しか宿泊者がいないらしく、ひとり一部屋を使って良いとの事。女将?のおばあさんが古い旅館の一部屋一部屋「ここの欄間は・・・」とか「襖絵は・・・」とか説明しながら案内してくれるものの、一部屋目で「ここでは広すぎるし怖いし絶対ひとりでは眠れません!」とすでに心の中で叫んでいた。別に何かに敏感なわけでもないし、どこでも3秒で眠れるほど寝つきはいいはずなんだけれどどうも落ち着かない。そのうち説明をしていたおばあさんも疲れてしまったのか、はぁはぁと息が上がってきて心配になる。結局一番大きな部屋に3人布団を敷いてもらって一緒に寝ることにした。
夕飯はイワナや野菜など地のものをつかったもの。その中で生ハムのようなものが1品。美味しいけれど食べたことが無いお味。訊ねると「ダチョウの肉ですよ」なんて笑いながら当然のことのように応えられてしまった。どうもこの辺で食べられているらしい。色々と衝撃的なことが多くて体はゆるりとさせているのに、神経が立ってしまって眠りが浅く、ほとんど寝られなかった。いつもはのび太級に寝つきが良いのに・・・。
取材自体は何の問題も無く順調で、伺ったお話もとても素敵な内容でした(これはまた掲載時に)
台風をすり抜けて
東奔西走。動き回る日々が続いている。
今夜は明日から三重県の而今禾で始まる堀仁憲さんの個展に行く前に、名古屋の友人夫妻のお宅に泊めて頂く。最近、名古屋に行くときは高速バスを使っている。片道約5時間半。寝ていると案外とあっという間でしかも¥3500!びっくりプライスである。この日は台風が近づいていて、台風をすり抜けるようにして名古屋に向かうことになった。途中の静岡あたりでは豪雨をバスの窓から見ていたが、名古屋に到着したら雨も降っていなくて静かなもの。
夜には宿泊先のO夫妻と、大阪へ行ってから名古屋で合流するオカズ夫妻と5人でビストロに行くことになっていた。が、オカズ夫妻が台風の影響で新幹線の中に閉じ込められているという。その後どうにかこうにかラストオーダーに間に合ってオカズ夫妻到着。良かった良かった。
翌日は台風一過の晴天。
堀さん、今回は白磁が増えている。いつも堀さんにはそのサイズ感と細かな技に関心させられる。すごいなぁ。一見シンプルなお皿でも細ーい立ち上がりというかラインが入っていて、それが全体をキュッと引き締めている。展示が続いていてかなり忙しそうだけど、本人とお話しているとのんびりした空気が漂っていた。お店の納品はオープンには間に合うかな、どうかな。あまり強くは追求できない…。二眼カメラでパシャパシャ写真を撮っていたけれど、いつか見てみたいなぁ而今禾の写真の出来がり。
墨の線画
蔵前にあるレストラン「キッチンソルト」で堀口尚子さんが展示を行っている。堀口さんの絵。かわいいだけでなく、ちょっといぢわるな顔をしているのがいい。今から5年前くらいになるのかな。その当時自由が丘にあったBORN FREE WORKSでのイベントで、墨で描かれた線画を何点か展示していて、その中の1点がずっとずっと気になっていた。たおやかな女性が横になっている絵。部屋にあったら気持ちが穏やかでいられそうな絵。そして2年前にも。同じキッチンソルトで展示されていた、あたたかな親子の絵がしばらく頭から離れなかった。そんなに気になっているのなら手に入れれば良いのだけれど、大抵そのタイミングが金欠のとき。どうしてだ!そういうめぐりあわせってあるのだと思う。ムリをするのかしないのかその時々だけれど、なんとなくホリさんの絵はムリしてはいけないような気がしていた。言い訳?
今回も観に行くと「あっ」と目が留まる絵が。三度目の正直で今年は赤ポチシールをつけて頂く。ふふふ。相変わらずちょっといぢわる。お店のどこかに飾ろうかな。
手書き文字
shop名の文字を母の手書き文字にしようということは、以前から考えていた。shop名の「in-kyo」も、もとはといえば祖母が暮らした隠居部屋から付けたもの。どこかに自分のルーツになるようなものを含ませたかったからで、別に今すぐに「隠居」したいわけでもないのですよ。先日、このHPの制作をお願いしているオカズデザインの吉岡夫妻と事務所のまなみちゃん、そしてFさんとその見習い?をしていてウチの近所に住むM君が実家の隠居部屋に遊びに来てくれた。しかも持ち寄りゴハン会。持ち寄りゴハン大好きです。いろんなお家の味を一度に楽しめて、しかもレシピも教わって。その場で味わっているから俄然「作ってみよう!」という気も起こる。私の少ない料理のレパートリーもちょっと広がるし、誰かに食べてもらう料理を作るのは緊張するけどやっぱり楽しい。
オカズデザインもFさんも本業と同じように(どちらも本業か)ケータリングのお仕事をしているお料理のプロ。そしてもちろん食いしん坊ときているからゴハンを食べていても食べ物の話がほとんど。隠居を見てからHPのデザインをし始めてくれるオカズに安心してお任せ。
書き文字は騙し騙し?母に何度も書いてもらってなんとか使えそうなものをオカズに送った。
新宿から1時間
藤野に住む作家さんを紹介していただくためにS夫妻と藤野へ向かう。S夫妻とは藤野の駅で待ち合わせをしていたけれど、中央線の中で私が乗っていた車両に二人が乗り込んできた。しかもS君は片手に太鼓を持って。面白いなぁ。でも中央線には不思議と似合う感じ。藤野は新宿から約1時間ほどなのに、緑がぐっと深く空も広い。相模湖の駅が隣りというのもすっかり旅気分。私の自宅も緑は多いけれど、種類はまた違ってずいぶんと気分転換にもなる。
紹介して頂いた柴代直樹さんは薪窯で器をつくる作家さん。自分で作ったという薪窯も見せて頂いて、デジカメを持っていたというのにぼんやりしていて写真を撮るのを忘れてしまっていた。なんだろ?美味しい食事を食べてしまってから写真を撮り忘れたことを気づくときにも似た感じ。いい意味でポカーンとしてしまったのだ。焼き締めの器はどっしりしていて力強くてお酒の場にあったらいい感じ。仕入れ用に好きな器を選んでいたら
「僕の器はおじさん好みなんですよ」って。はい、おじさんなんですよ、私。味が深く沁みこんだ煮物を盛り付けたいなぁ。ちょっと大きめの飯碗にはピカピカの白米を盛って大きな手をした男の人に使って欲しいなぁ。やっぱり色々とイメージが沸く器が好きなんだな、おじさんは。
お茶とともに頂いた羊羹を盛り付けたのは、それも柴代さんが作る銀彩の鉢。気負い無く普段づかいの銀彩の姿がまたいい。とりあえず工房にあるものから器を選んで納品をお願いした。年末には薪窯の窯焼きがあるらしい。お手伝いをすればもれなく?消防服が着られるらしいから行こうかな。約1週間、火の世話をしながら器が焼き上がる様子はいつかこの目で見てみたいと思っているけれど。興味のアンテナがぐるぐる動いていて、本当にこの日は写真どころではなかった。と、思ったらデジカメを柴代さん宅に置き忘れてきてしまった。しかも三鷹の「ハルピン」で夕飯に餃子を食べながら、その後合流した友人に興奮気味に話をして画像を見せようとするまで気づかなかったのだ。ホントお気楽。後日器とともにきちんと梱包されたデジカメは戻ってきたのだけれど。
sasulaiにて
Uさんと千石のsasulaiへ松原竜馬さんの個展を見に出かける。松原さんの器は決して派手さはないけれど、お料理を盛り付けるとそのお料理を数倍美味しそうに見せてくれるという大好きな器。使いやすいし、丈夫なので安心できるからか食卓にのぼる出番も自然と多くなる。今回は個展にだけ出す器もあると聞いていて、前からとても楽しみにしていた。sasulaiのK君、Uちゃんにお店で会うのも久しぶり。二人に会うと「力を抜かなきゃ」と思わされる。なんだか和むこの空間は、ついつい長居をしてしまうsasulaiマジック。この日ははじめて見る渋みのあるお皿を購入。これは個展用に作ったもの。Uちゃんも目をつけていたらしい。ごめんねUちゃん。ウチにご飯を食べに来てくれたらこのお皿で出すからね。さて何を盛り付けよう?野菜でもお肉でも果物でも。火をしっかり入れたあったかい食べものが似合いそうかな。と言いつつ写真は巨峰に合わせてみたけれど。
千石へ行ったらお決まりのコースで、帰りは八百コーヒー店に寄って美味しいコーヒーとロールケーキでお茶。八百夫妻と会っていても「力を抜かなきゃ」と思う。だからしばらく会ってないと二人に無性に会いたくなる。Uさんのおしゃべりもいつもものすごく楽しくてお腹を抱えて笑ってしまう。好きな人に会って思い切り笑って。当たり前にできそうなことだけど、でも、でも大事なことだ。
伊藤聡信さんの器
西荻の魯山で伊藤聡信さんの個展が昨日から行われている。伊藤さんの器とはじめて出会ったのも魯山だった。そのことは以前に本の中でも書かせて頂いた。魯山での伊藤さんの個展は2年ぶり。伊藤さんには器の発注をお願いする予定というのももちろんあるけれど、どんな器が並ぶのか仕事以前に、やはり個人的な興味の方が勝っている。こんなことでは魯山の大嶌さんに叱られるかもな(笑) 途中、色々と寄り道をしていたら西荻に到着する頃にはすっかり夕方になってしまった。
今回の伊藤さんの個展は「伊藤さんの器」という方向のようなものを、はっきり見せて頂いたようでどれもこれも本当に良かった。おこがましい言い方になってしまったかもしれないけれど・・・でもとっても良かったのです。お店を始めることを店主の大嶌さんにお話をしたら、いろいろと助言を頂いた。ある程度の年齢になって、しかも会社などの組織に属していない今のこの身では、なかなか目上の方から何かを助言される機会も少なくなっているので本当に有り難い。あらためてキュキュっと身の引き締まる思いがして、帰りの電車の中では頭の中がお店のことでぐるぐるといっぱいになっていた。明日はアノニマ前で伊藤さんと待ち合わせをして、お店の場所を見て頂く約束をした。まだ工事も終わっていないけれど、雰囲気だけでも感じ取って頂ければと思って。
曽田さんの靴
革作家の曽田さんが、今日から茅ヶ崎のカロカロハウスで個展を行うので早起きをして茅ヶ崎へ向かう。茅ヶ崎の駅を降りたのは何年ぶりだったろう?もう思い出せないくらい年月が経っている。
N子さんと駅で待ち合わせをしてカロカロハウスへ。途中おしゃべりに夢中になって、気がつくと1本曲がる道を通り越して海岸が見える大きな通りまで出てしまった。この日もおそらく35℃を超えていたに違いない。体の水分が足りなくなって、汗がもう出てこない。こういうのが熱中症のもとだ、きっと。慌てて近くのコンビニに駆け込んでペットボトルの水を買い、水分補給をしてようやく到着。
曽田さんの展示はいつ見ても楽しい。特に今回のサンダルタイプの靴は色の配色といい、形といい、海とともに暮らす茅ヶ崎の空気に合っている気がした。基本の形は同じものの、使用している革の配色やハギレの形、ミシンのステッチなどひとつとして全く同じというものは無い。十人十色ならぬ十足十色。みんなそれぞれ自分の顔を持っている。子供用の靴もかわいかった。やんちゃな男の子に履かせてみたい。新作の円柱型の鞄も展示してあった。バッグとしてはもちろん、家の中で読みさしの雑誌や新聞を入れてもいいし、玄関のスリッパ入れとして使っても良さそうだ。in-kyoにも入荷予定。
この日、曽田さんの奥さまの京子さんから陣痛が始まったという連絡が曽田さんに入った。立ち会う約束らしいが間に合うのだろうか。展示も初日できっと気が気じゃないだろう・・・。
夜はYさんも加わって3人集まり「ともすけ」さんで夕食。ここはいつ行っても食材の組み合わせや味わいに驚きがあって、楽しくて美味しい。ついでにお酒も進んでしまう。ともすけさんに会うと幸せな気持ちになれるというのも足が向く最大の理由。Yさんからは「乙女座は来月から28年に一度の大成長期が始まるのよ。しかも2年間!」と教えて頂く。良いことだけは何でも信じる。ぜひその通りでありますように。帰る頃に豪雨に遭ったがこれも幸運が始まる前の試練と思えば何のそのと、単純である。
後日、曽田さんから連絡があり、3日後無事男の子が誕生したそう。しかも立会いもできたとのこと。親孝行な赤ちゃん。良かった良かった。お店のオープンの頃にはご対面ができるだろうか。
くまがいさんの器が届く
郡上八幡から昨日戻って、帰るなりお風呂に入り、早目に就寝。
と言いつつ、ずーっと郡上踊りの「春駒」のワンフレーズ♪~七厘三分の春駒、春駒~♪という音楽(井藤さんちの野衣ちゃんは「一郎さんちの~♪」と歌っていて、本当はこちらの替え歌で覚えてしまっている)が頭の中でリフレインしていて離れない。それならばと、布団に入る前、忘れないうちに鏡の前で踊りをおさらいしてみる。「踊りすけべぇ」(郡上踊りが大好きでたまらない人たちをこう呼ぶらしい)な方たちのようにはなかなか上手くはいかないが、毎年通ってしなやかに踊れるようになりたい!と思いながら床に就いた。
午前中に荷物が届く。
楽しみに待っていたくまがいのぞみさんからの荷物だ。箱を開けると丁寧に梱包された器たちが顔を覗かせる。その梱包の仕方からもくまがいさんの人柄がうかがえる。プチプチをはずす瞬間、心が躍る。あぁ使いたい、こう使いたいといろんな想像がスルスル沸いてくる。他の作家さんのときもきっと届くたびに同じように思うのだろう。こう感じた初めの瞬間の気持ちはお店を続けていく上でも、これから先ずっと忘れないでおこう。
この器たちは、発注のお願いをする前に「使って頂いて感想を聞きたいんです。」と言うくまがいさんがサンプルを作って送って下さったもの。なんとまっすぐな人なんだろう。私もそのまっすぐな思いに応えるべく、あれこれ使いまわしてみて感想を伝えなければ。