続きの梅しごと

昨年、自生していた赤紫蘇の種を庭に蒔いたものが、
まだまだ背は低いものの、葉を選んで摘めばなんとか
今年の梅干しに使えそうなくらいに成長した。
農家さんが畑で育てているわさわさと繁る赤紫蘇とは比べものに
ならないけれど、それでも自宅の庭先で育ったものかと
思うと我が子のようでかわいらしい。摘んでしまったけど。

梅酢が浸かりやすいように重石代わりになる手頃な大きさの
ものはないかと食器棚を物色していると、
実家にあった昭和のガラスの器が目に留まる。
実家では素麺を食べるときはこの器と決まっていた。
冷やし中華も。
昭和に大量生産されていたなんてことはない器。
でもなんとなく実家から持ってこれまでの何回かの引越しも共にした。
お揃いのそば猪口も一緒にしてある。

この器を久しぶりに引っ張り出したら、
建て替える前の実家の、夏の昼ごはんの景色を思い出した。
台所のお勝手口を開け放ち、網戸代わりの暖簾越しから入ってくるのはぬるい風。
それを首を振る扇風機で台所の空気とかき混ぜてまた外へと送り出す。
台所に置かれたテレビでは夏の甲子園。
「暑い、暑い」と言いながら母が揚げてくれたナスを
ショウガ醤油で食べながら、ガラスの器には素麺が。
器ひとつで一気に夏の食卓へワープする。

友人の梅と庭の赤紫蘇、そして実家からやってきた昭和のガラス皿。
材料やら道具やらが今年の梅干しの味を作る。