手書き文字

shop名の文字を母の手書き文字にしようということは、以前から考えていた。shop名の「in-kyo」も、もとはといえば祖母が暮らした隠居部屋から付けたもの。どこかに自分のルーツになるようなものを含ませたかったからで、別に今すぐに「隠居」したいわけでもないのですよ。先日、このHPの制作をお願いしているオカズデザインの吉岡夫妻と事務所のまなみちゃん、そしてFさんとその見習い?をしていてウチの近所に住むM君が実家の隠居部屋に遊びに来てくれた。しかも持ち寄りゴハン会。持ち寄りゴハン大好きです。いろんなお家の味を一度に楽しめて、しかもレシピも教わって。その場で味わっているから俄然「作ってみよう!」という気も起こる。私の少ない料理のレパートリーもちょっと広がるし、誰かに食べてもらう料理を作るのは緊張するけどやっぱり楽しい。
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オカズデザインもFさんも本業と同じように(どちらも本業か)ケータリングのお仕事をしているお料理のプロ。そしてもちろん食いしん坊ときているからゴハンを食べていても食べ物の話がほとんど。隠居を見てからHPのデザインをし始めてくれるオカズに安心してお任せ。
書き文字は騙し騙し?母に何度も書いてもらってなんとか使えそうなものをオカズに送った。

新宿から1時間

 藤野に住む作家さんを紹介していただくためにS夫妻と藤野へ向かう。S夫妻とは藤野の駅で待ち合わせをしていたけれど、中央線の中で私が乗っていた車両に二人が乗り込んできた。しかもS君は片手に太鼓を持って。面白いなぁ。でも中央線には不思議と似合う感じ。藤野は新宿から約1時間ほどなのに、緑がぐっと深く空も広い。相模湖の駅が隣りというのもすっかり旅気分。私の自宅も緑は多いけれど、種類はまた違ってずいぶんと気分転換にもなる。
 紹介して頂いた柴代直樹さんは薪窯で器をつくる作家さん。自分で作ったという薪窯も見せて頂いて、デジカメを持っていたというのにぼんやりしていて写真を撮るのを忘れてしまっていた。なんだろ?美味しい食事を食べてしまってから写真を撮り忘れたことを気づくときにも似た感じ。いい意味でポカーンとしてしまったのだ。焼き締めの器はどっしりしていて力強くてお酒の場にあったらいい感じ。仕入れ用に好きな器を選んでいたら
「僕の器はおじさん好みなんですよ」って。はい、おじさんなんですよ、私。味が深く沁みこんだ煮物を盛り付けたいなぁ。ちょっと大きめの飯碗にはピカピカの白米を盛って大きな手をした男の人に使って欲しいなぁ。やっぱり色々とイメージが沸く器が好きなんだな、おじさんは。
お茶とともに頂いた羊羹を盛り付けたのは、それも柴代さんが作る銀彩の鉢。気負い無く普段づかいの銀彩の姿がまたいい。とりあえず工房にあるものから器を選んで納品をお願いした。年末には薪窯の窯焼きがあるらしい。お手伝いをすればもれなく?消防服が着られるらしいから行こうかな。約1週間、火の世話をしながら器が焼き上がる様子はいつかこの目で見てみたいと思っているけれど。興味のアンテナがぐるぐる動いていて、本当にこの日は写真どころではなかった。と、思ったらデジカメを柴代さん宅に置き忘れてきてしまった。しかも三鷹の「ハルピン」で夕飯に餃子を食べながら、その後合流した友人に興奮気味に話をして画像を見せようとするまで気づかなかったのだ。ホントお気楽。後日器とともにきちんと梱包されたデジカメは戻ってきたのだけれど。
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sasulaiにて

 Uさんと千石のsasulaiへ松原竜馬さんの個展を見に出かける。松原さんの器は決して派手さはないけれど、お料理を盛り付けるとそのお料理を数倍美味しそうに見せてくれるという大好きな器。使いやすいし、丈夫なので安心できるからか食卓にのぼる出番も自然と多くなる。今回は個展にだけ出す器もあると聞いていて、前からとても楽しみにしていた。sasulaiのK君、Uちゃんにお店で会うのも久しぶり。二人に会うと「力を抜かなきゃ」と思わされる。なんだか和むこの空間は、ついつい長居をしてしまうsasulaiマジック。この日ははじめて見る渋みのあるお皿を購入。これは個展用に作ったもの。Uちゃんも目をつけていたらしい。ごめんねUちゃん。ウチにご飯を食べに来てくれたらこのお皿で出すからね。さて何を盛り付けよう?野菜でもお肉でも果物でも。火をしっかり入れたあったかい食べものが似合いそうかな。と言いつつ写真は巨峰に合わせてみたけれど。
千石へ行ったらお決まりのコースで、帰りは八百コーヒー店に寄って美味しいコーヒーとロールケーキでお茶。八百夫妻と会っていても「力を抜かなきゃ」と思う。だからしばらく会ってないと二人に無性に会いたくなる。Uさんのおしゃべりもいつもものすごく楽しくてお腹を抱えて笑ってしまう。好きな人に会って思い切り笑って。当たり前にできそうなことだけど、でも、でも大事なことだ。
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伊藤聡信さんの器

 西荻の魯山で伊藤聡信さんの個展が昨日から行われている。伊藤さんの器とはじめて出会ったのも魯山だった。そのことは以前に本の中でも書かせて頂いた。魯山での伊藤さんの個展は2年ぶり。伊藤さんには器の発注をお願いする予定というのももちろんあるけれど、どんな器が並ぶのか仕事以前に、やはり個人的な興味の方が勝っている。こんなことでは魯山の大嶌さんに叱られるかもな(笑) 途中、色々と寄り道をしていたら西荻に到着する頃にはすっかり夕方になってしまった。 
 20071009-HP用画像 013.jpg今回の伊藤さんの個展は「伊藤さんの器」という方向のようなものを、はっきり見せて頂いたようでどれもこれも本当に良かった。おこがましい言い方になってしまったかもしれないけれど・・・でもとっても良かったのです。お店を始めることを店主の大嶌さんにお話をしたら、いろいろと助言を頂いた。ある程度の年齢になって、しかも会社などの組織に属していない今のこの身では、なかなか目上の方から何かを助言される機会も少なくなっているので本当に有り難い。あらためてキュキュっと身の引き締まる思いがして、帰りの電車の中では頭の中がお店のことでぐるぐるといっぱいになっていた。明日はアノニマ前で伊藤さんと待ち合わせをして、お店の場所を見て頂く約束をした。まだ工事も終わっていないけれど、雰囲気だけでも感じ取って頂ければと思って。

曽田さんの靴

革作家の曽田さんが、今日から茅ヶ崎のカロカロハウスで個展を行うので早起きをして茅ヶ崎へ向かう。茅ヶ崎の駅を降りたのは何年ぶりだったろう?もう思い出せないくらい年月が経っている。
 N子さんと駅で待ち合わせをしてカロカロハウスへ。途中おしゃべりに夢中になって、気がつくと1本曲がる道を通り越して海岸が見える大きな通りまで出てしまった。この日もおそらく35℃を超えていたに違いない。体の水分が足りなくなって、汗がもう出てこない。こういうのが熱中症のもとだ、きっと。慌てて近くのコンビニに駆け込んでペットボトルの水を買い、水分補給をしてようやく到着。
 曽田さんの展示はいつ見ても楽しい。特に今回のサンダルタイプの靴は色の配色といい、形といい、海とともに暮らす茅ヶ崎の空気に合っている気がした。基本の形は同じものの、使用している革の配色やハギレの形、ミシンのステッチなどひとつとして全く同じというものは無い。十人十色ならぬ十足十色。みんなそれぞれ自分の顔を持っている。子供用の靴もかわいかった。やんちゃな男の子に履かせてみたい。新作の円柱型の鞄も展示してあった。バッグとしてはもちろん、家の中で読みさしの雑誌や新聞を入れてもいいし、玄関のスリッパ入れとして使っても良さそうだ。in-kyoにも入荷予定。
 この日、曽田さんの奥さまの京子さんから陣痛が始まったという連絡が曽田さんに入った。立ち会う約束らしいが間に合うのだろうか。展示も初日できっと気が気じゃないだろう・・・。
 夜はYさんも加わって3人集まり「ともすけ」さんで夕食。ここはいつ行っても食材の組み合わせや味わいに驚きがあって、楽しくて美味しい。ついでにお酒も進んでしまう。ともすけさんに会うと幸せな気持ちになれるというのも足が向く最大の理由。Yさんからは「乙女座は来月から28年に一度の大成長期が始まるのよ。しかも2年間!」と教えて頂く。良いことだけは何でも信じる。ぜひその通りでありますように。帰る頃に豪雨に遭ったがこれも幸運が始まる前の試練と思えば何のそのと、単純である。
後日、曽田さんから連絡があり、3日後無事男の子が誕生したそう。しかも立会いもできたとのこと。親孝行な赤ちゃん。良かった良かった。お店のオープンの頃にはご対面ができるだろうか。

くまがいさんの器が届く

 郡上八幡から昨日戻って、帰るなりお風呂に入り、早目に就寝。
と言いつつ、ずーっと郡上踊りの「春駒」のワンフレーズ♪~七厘三分の春駒、春駒~♪という音楽(井藤さんちの野衣ちゃんは「一郎さんちの~♪」と歌っていて、本当はこちらの替え歌で覚えてしまっている)が頭の中でリフレインしていて離れない。それならばと、布団に入る前、忘れないうちに鏡の前で踊りをおさらいしてみる。「踊りすけべぇ」(郡上踊りが大好きでたまらない人たちをこう呼ぶらしい)な方たちのようにはなかなか上手くはいかないが、毎年通ってしなやかに踊れるようになりたい!と思いながら床に就いた。
 午前中に荷物が届く。
楽しみに待っていたくまがいのぞみさんからの荷物だ。箱を開けると丁寧に梱包された器たちが顔を覗かせる。その梱包の仕方からもくまがいさんの人柄がうかがえる。プチプチをはずす瞬間、心が躍る。あぁ使いたい、こう使いたいといろんな想像がスルスル沸いてくる。他の作家さんのときもきっと届くたびに同じように思うのだろう。こう感じた初めの瞬間の気持ちはお店を続けていく上でも、これから先ずっと忘れないでおこう。
くまがいさんの器
この器たちは、発注のお願いをする前に「使って頂いて感想を聞きたいんです。」と言うくまがいさんがサンプルを作って送って下さったもの。なんとまっすぐな人なんだろう。私もそのまっすぐな思いに応えるべく、あれこれ使いまわしてみて感想を伝えなければ。

郡上徹夜踊り

 14~16日の二泊三日で郡上八幡へ行ってきた。今回は全くのプライベートで、N子さんと女子ふたりの夏休み。そもそも郡上を訪れることになったのは、郡上在住の井藤さんに「郡上踊りの時期に遊びに来ませんか?」と誘われたのがきっかけだった。しかも徹夜で盆踊りを踊りに。郡上踊りが日本三大盆踊りということは知っていても、ねぶたや阿波踊りのように名前を聞いてピンとくる踊りは思い浮かべることができなかった。それでも理由もなくワクワクして、あちらで着る浴衣を荷物に詰め込んで出かけた。
名古屋からは岐阜行きの電車に乗り換えさらにその先、美濃太田の駅から郡上八幡へ向かう長良川鉄道は、長良川の流れと電車がまるで二頭の馬が戯れながら走っているような感じで… とかなんとか知ったように書いたものの、実はその景色をしっかりと見れたのは帰りだけで、行きはあまりにも気持ち良いディーゼル列車の揺れに身を任せてほとんど爆睡。川の向こうには迫ってくるような山の緑と、眩しくまっすぐな夏の陽射し。それは映画「少年時代」の景色のそのものようで、しばらく井上陽水の歌声が頭の中を流れていた。
 井藤家では子供たちと近くの川へ行って遊んだり、帰ってきたら扇風機の風に吹かれながら畳の部屋で昼寝をし、夕飯はお庭でバーベキューをするなど、夏を満喫させて頂いた。仕事が休みで家にいても、こんなに上質な時間の使い方ができる3日間はそうそう無い。たった3日間でも1週間くらい滞在していたようなとても贅沢な時間だった。
郡上八幡盆踊り
 そして肝心の郡上徹夜踊りは・・・。さすがに一晩中はキツイので、仮眠をしてから深夜2時頃に井藤さんと奥様の万紀子さんN子さんと4人で出動。その時間でも町中は活気に満ちていて、粋に浴衣を着こなす人で大賑わい。下手ながらも踊りの列に混ざって下駄をカランコロン鳴らして踊る気持ちよさと言ったら・・・。明け方、空が白じんでまわりの人たちの顔がよぉく見えるようになってくると、若者からご年配までみんなとてもいい顔をしていた。その笑顔からは郡上の地に対する愛情が感じられて、こちらまで清々しい気持ちになっていた。また来年も水が豊かに流れるあの土地へ。

Bateau rubijineuxへ

蓮田よしぼー(陶芸家・吉村和美氏)の車で造形作家・前川秀樹さん・千恵さんのアトリエ「Bateau rubijineux」へ連れて行ってもらう。 駐車場からは霞ヶ浦が見えて、それを囲うように蓮が密生している。蓮池などといった規模ではない。青緑色をした葉の色がどこまでもどこまでも続く光景はまるで夢の中にいるような感覚だ。
大きな銀杏の木の下に佇むアトリエの小屋も その裏に延びる山道も不思議なくらいぽっかりと取り残されたようにのんびりとした静かな空気が流れている。でも決して寂しく感じないのは、夏の陽射しとセミの鳴き声と何より前川さんの作品が魅力的だからでしょう。きっと。千恵さんの美味しいパンや飲み物を頂きながら、すっかり寛いで2時間以上もいてしまった。
ギャラリーに足を踏み入れて、すぐ目に付いた壁に取り付けられたランプ。実はそのランプをお店用に購入するかどうかを悩んでいたのだ。どこか工場をイメージさせる雰囲気がひと目で気に入ったものの、実際の取り付け場所や天井高が心配で即決できなかった。2時間以上もいたのはそれも理由のひとつなのだが・・・。暑さも手伝って思考が上手く働かない。私がウダウダしている間によしぼーは椅子を選んでいつのまにか購入していた。そんな様子を横目で見つつ、この日は結局保留のまま帰ることにした。
この日私がギャラリーで見ていたランプはその後すぐに売れてしまったようだが、後日前川さんが新作のクレーンランプ(正式名称)をなんと工事中のアノニマへ届けて下さった。「実際に見てもらった方がいいと思うので」とメールを頂く。恐縮しきり。作品は使用している材料が一点一点同じものではない為、ギャラリーで見たものとはまた別の表情なのに、あのとき感じた「工場」という空気感は不思議とそのまま、まとっている。取り付け場所や天井高も実際に確認して決定!お店に取り付ける日が今から楽しみ。妄想部の頭の中では既に取り付けられているけれど。
「Bateau rubijineux」は
月に一度、4日間だけのオープンになるので機会があればぜひ。
私もイチョウが色づく頃にまたぜひ訪れたいと思っています。
http://lolocaloharmatan.seesaa.net/

アノニマ・スタジオへ

アノニマ・スタジオへ床剤剥がしの作業を手伝いに行く。金曜日にアノニマのスタッフの方々が第一弾として作業を進めてくださっていて、初めて見たときよりも明るくなっている。鉄部分のサビや床の汚れが取れるだけでもずいぶんと違うものだ。
この日はアノニマスタッフよりもぐーんと?平均年齢の高いメンバー10名でその続きの作業を。まだ1Fは冷房が取り付けられていないので用心して着替えやら首に巻く手拭いなどを持参。けれども隅田川の川風がサワサワと吹いてきて、汗をかいた体に心地良い。とはいえ、ダラダラと汗をかき、ホコリが体に貼りついて、まるで部活帰りの高校生のよう。
アノニマ・スタジオ
 「それならば!」と、丹治さんが近くの銭湯「梅の湯」へみんなを案内してくれる。「梅の湯」は、番台におじさんが座り、湯船の向こうには富士山の絵が描かれてある昔ながらの銭湯だった。小さくチビた石鹸をみんなで使いまわして、東京の下町ならではの熱い湯に浸かってようやくさっぱりする。大人はこれだからいい。高校生は汗をかいても帰りに銭湯へ寄ろうだなんてきっとしない。お風呂上りにビン入りのコーヒー牛乳を飲みたかったのをグッとこらえて、近くの居酒屋さんへ。「ぷはーっ」と疲れを吹き飛ばすようにビールで乾杯。やっぱり大人はこれだからいい。