ひとしずく

昨夜降り続けていた雨も上がって静かな朝。
庭の隅にある一坪畑へ出てみると、
まだ幼い里芋の葉に雨粒がキラリと一雫。


尊敬しているお習字の先生は
毎年七夕の時期になると、
里芋の葉に溜まった朝露を毎日少しずつ集め、
教室で墨をする際にその水を使わせて下さるのです。
先生がお生まれになった土地ではその墨汁で短冊に願い事を書くと、
願いが叶うと言われていたとの事。

「今年は雨が多くて、葉に溜まる前にこぼれてしまうし、
笹も雨でビシャビシャで使えないのよ」

と、電話の向こうの声。
でも先生はご自分で半紙に描いた笹の絵の脇に
願い事を書いて飾るのだそう。
今ある中でできる楽しみを先生はいつも忘れない。

このご時世でお習字の教室へもなかなか伺えずに
もどかしいけれど、自宅で自主練しようっと。
先生の遊び心やチャーミングな精神をいつも心に留めておきたい。