過日のお習字の日。
コロナ禍でなかなか伺うことができなかったけれど、
2月から月に一度のお習字通いを再開。
雪の日も多く、寒さも厳しかったこの冬は
例年よりも長く、ことさらに春が待ち遠しかった。
そんな矢先の先日の地震は大きく長い揺れと停電。
その後今も続く余震。
いくつか器が割れたり、自宅の瓦がズレたりしたものの
ケガもなく大きな被害はなかったとはいえ、
11年前をありありと思い出し、ここのところ気持ちが塞ぎがちだった。
先生のご自宅周辺は被害が大きかった場所もあり、
同じように感じていらしたようで、
直接お会いしてお話しできたことで
心をギュッと引き上げて頂いた。
「怖かった」
自分よりも大変な思いをされている方が多くいらっしゃるのに
そのことを口に出してはいけない気がして言えずにいたけれど、
先生にお会いしてこの日、やっと口に出すことができた。
お陰でふぅーっと深い息を吐き出して
身体の力が抜けていくようだった。
気を取り直してお習字。
私の課題の文字は「寒来暑往」
暑さが去って、寒さが来る。春夏秋冬、
季節の移り変わりについての中国の言葉だけれど、
先生はさらに
「そのことがこの先もずっと繰り返し、
永遠に続いていくことが幸せなこと」
だと続けて説明してくださった。
日々、そして季節をあたり前のように
過ごすことができているという尊さ。
世の中様々なことが起きている今だから
なおさら沁み入る言葉。
書道はなかなか上達はしないものの、
墨の香りとともにひたすら文字を書き、
集中している時間が心地よい。
そして先生の「よくできました」の
朱の文字を頂けるのは格別の嬉しさ。
子どものようだが、いくつになっても
この嬉しさは変わらない。
そしていつも楽しみにしている先生のおやつ。
今月はなんと、なんとフキノトウのチョコレート!
しかもその様子がまるで土の中から
ニョキニョキと新芽が顔を出したよう。
トッピングに使ったものも、チョコレートの中にも
細かく刻んだ生のままのフキノトウが混ぜ込んである。
「チョコレートのほろ苦さに合うと思って」
その言葉の通り、春を感じる絶妙なほろ苦さ。
なんとしなかやな感性なんでしょう。
先生は70歳を超えていらっしゃるけれど、
これは年齢ではない。とにかくチャーミングで
日々の暮らしを豊かに過ごす上でも、私にとって
心から尊敬している先生なのだ。
柚子ピールとクリームチーズの組み合わせも、
なめらかになるようにほんの少しの生クリームと
レモン果汁の酸味も少し加えて。
深煎りのコーヒーにとても合う味に。
思いもしないことが起きて悲しい思いをしたり、
不安になったり動揺したり大変なことはたくさんあるけれど、
先生はどんなときでも
「暮らしかたよ」
と、おっしゃっていた。
先生も以前にある方からそう言われたという言葉。
この「暮らしかた」とは=考え方、物事のとらえ方、生き方
なのかな?と私は解釈している。